2017年07月02日

122.「学者の会」の抗議声明

憲法第12条にこうあります。「この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によって、これを保持しなければならない」。 憲法が保障する自由や権利を守り抜いていくために、主権者として声を上げ、行動することが必要な時がある。今はまさにその時ではないか! このことを改めて認識させる抗議声明が、「安全保障関連法に反対する学者の会」から6月18日付で発表されました。その抗議声明文を紹介する前に、先に2015年9月20日付で発表された「安全保障関連法」に対する抗議声明を転載しておきたいと思います。こちらです。

抗議声明
2015年9月19日未明、与党自由民主党と公明党およびそれに迎合する野党3党は、前々日の参議院特別委員会の抜き打ち強行採決を受け、戦争法案以外の何ものでもない安全保障関連法案を参議院本会議で可決し成立させた。私たちは満身の怒りと憤りを込めて、この採決に断固として抗議する。  国民の6割以上が反対し、大多数が今国会で成立させるべきではないと表明しているなかでの強行採決は、「国権の最高機関」であるはずの国会を、「最高責任者」を自称する首相の単なる追認機関におとしめる、議会制民主主義の蹂躙である。
 
また圧倒的多数の憲法学者と学識経験者はもとより、歴代の内閣法制局長官が、衆参両委員会で安保法案は「違憲」だと表明し、参院での審議過程においては最高裁判所元長官が、明確に憲法違反の法案であると公表したなかでの強行採決は、立憲主義に対する冒涜にほかならない。

 歴代の政権が憲法違反と言明してきた集団的自衛権の行使を、解釈改憲にもとづいて法案化したこと自体が立憲主義と民主主義を侵犯するものであり、戦争を可能にする違憲法案の強行採決は、憲法9条のもとで68年間持続してきた平和主義を捨て去る暴挙である。
 
こうした第3次安倍政権による、立憲主義と民主主義と平和主義を破壊する暴走に対し、多くの国民が自らの意思で立ち上がり抗議の声をあげ続けてきた。戦争法案の閣議決定直前の5月12日、2800人だった東京の反対集会の参加者は、衆院強行採決前後の7月14日から17日にかけて、4日連続で、国会周辺を2万人以上で包囲するにいたった。そして8月30日の行動においては12万人の人々が、国会周辺を埋めつくした。  
これらの運動は「戦争をさせない・9条壊すな! 総がかり行動実行委員会」が、政治党派はもとより、思想や信条もこえた共同を実現するためにあらゆる努力をしてきたことによって形成された。「安全保障関連法案に反対する学者の会」と学生たちの「SEALDs」、そして日本弁護士連合会との共同行動も、こうした新しい運動の繋がりのなかで実現した。  
「安全保障関連法案に反対する学者の会」は学問と良識の名において組織され、発起人と呼びかけ人が発表した声明に、賛同署名を呼びかける活動によって一気に全国に拡がった。6月15日と7月20日の記者会見後、各大学において有志の会が組織され、学生、教職員はもとより、卒業生や退職者も含めた、それぞれに独自で多様な声明が発せられて、集会が開かれ、パレードが行われた。「学者の会」に寄せられた署名者の数は現在、学者・研究者14120人、市民30957人に達し、声明等の行動に立ち上がった大学は140大学以上に及んでいる。私たち「学者の会」は、知性と理性に反する現政権の政策を認めることはできないし、学問の軍事利用も容認することはできない。

 戦後70年の節目の年に、日本を戦争国家に転換させようとする現政権に対し、1人ひとりの個人が、日本国憲法が「保障する自由及び権利」を「保持」するための「不断の努力」(憲法第12条)を決意した主権者として立ち上がり、行動に移したのである。私たち「学者の会」も、この1翼を担っている。
 
この闘いをとおして、日本社会のあらゆる世代と階層の間で、新しい対等な連帯にもとづく立憲主義と民主主義と平和主義を希求する運動が生まれ続けている。この運動の思想は、路上から国会にもたらされ、地殻変動のごとく市民社会を揺るがし、生活の日常に根を下ろしつつある。ここに私たちの闘いの成果と希望がある。
 
私たちはここに、安倍政権の独裁的な暴挙に憤りをもって抗議し、あらためて日本国憲法を高く掲げて、この違憲立法の適用を許さず廃止へと追い込む運動へと歩みを進めることを、主権者としての自覚と決意をこめて表明する。

2015年9月20日
安全保障関連法に反対する学者の会

そしてこちらが2017年6月18日付「共謀罪法案」に対する声明です。

■共謀罪法案の強行採決に対する抗議声明
 2017年6月15日に、自民党・公明党・日本維新の会は、参議院において、組織的犯罪処罰法改正法案につき、法務委員会での採決を経ることなく本会議での採決を強行した。内容的にも、手続的にも、民主主義を破壊する暴挙である。
 閣僚・与党および法務省は本法案を「テロ等準備罪」を創設するものと称したが、当初明らかになった案には「テロ」の語が存在しなかった。その後も「テロリズム集団その他」の語が挿入されただけで、テロ対策を内容とする条文は全く含まれない。しかも、日本はテロ対策主要国際条約をすべて批准し、国内法化を終えていることから、組織的なテロの準備行為はすでに網羅的に処罰対象である。本立法にテロ対策の意義はない。内閣が法案提出にあたって理由とした国連国際組織犯罪防止条約も、その公式「立法ガイド」の執筆者が明言するとおり、テロ対策を内容とするものではない。
 本改正法の処罰対象は、犯罪の計画の合意と「実行準備行為」から成る、国際的に共謀罪(conspiracy)と理解されるものにほかならない。主体の要件とされる「組織的犯罪集団」には、一般の団体の一部をなす集団の性質が犯罪的なものに変化すれば該当することとなり、人権団体や環境保護団体として組織されたものも対象たりうることを政府答弁は認めている。「実行準備行為」は実質的な危険を含まない単なる「行為」で足り、無限定である。約300に及ぶ対象犯罪は、テロにもマフィアにも関係のない多数の類型を含む一方で、警察の職権濫用(らんよう)・暴行陵虐罪や公職選挙法違反など公権力を私物化する罪や、民間の商業賄賂罪など組織的経済犯罪を意図的に除外しており、国連条約の趣旨に明らかに反している。
 こうした点について国会で実質的な議論を拒み、虚偽の呼称により国民をだまし討ちにしようとする政府の姿勢は、議会制民主主義への攻撃である。さらに参議院での採決は、委員会採決を経ない手続を「特に緊急を要する」場合にしか認めない国会法に違反している。
 これらの内容・手続の問題点を問いただす公式の書簡がプライバシー権に関する国連特別報告者から首相宛てに出されたにもかかわらず、政府は質問に回答するどころかこれに抗議した。国連人権委員会においては、表現の自由に関する特別報告者によって、日本の政治家の圧力によるメディアの情報操作も公式に報告されている。国連との関係の悪化は、北朝鮮問題の解決や国連国際組織犯罪防止条約への参加を要する日本の国益を侵害している。
 ここに、本強行採決に強く抗議し、今後、市民の自由を侵害する怖(おそ)れのある法が悪用されないよう厳しく監視することと、立憲主義と民主主義を回復する勢力によって、この法を廃止することを広く社会に対して呼びかける。
2017年6月18日
安全保障関連法に反対する学者の会・呼びかけ人一同

もしもこのの2つの法が、憲法で定められている国民の自由や権利を侵害する悪法であったとして、われわれ有権者はどうすれば良いのか? いちど成立してしまった法だもの、なすすべは無いのだ、とあきらめてしまったらおしまいです。

上記の声明文が示唆するように、ひとたび成立してしまった法であっても「立憲主義と民主主義を回復する勢力」によって、その法を廃止することはできるのです。具体的な方法として、「立憲主義と民主主義を回復する勢力」を、選挙によって誕生させることもそのひとつ。もちろん、有権者として声を上げ行動に移す手段は他にもあります。大切なのは、「この憲法が国民に保障する自由及び権利は国民の不断の努力によってこれを保持しなければならない」ということを常に意識し、「不断の努力」の具体的方法を模索していくことではないでしょうか。
posted by Lily at 16:54 | 政治と憲法