2017年06月25日

121.「慰霊の日」翁長知事の平和宣言

先日の6月23日。日本は沖縄戦から72年の「慰霊の日」を迎えました。先の戦争では、日本の国土面積の約0.6%に過ぎないこの小さな沖縄で激戦が繰り広げられ、20万人を超える方々が亡くなったといわれます。そして沖縄には、今なお在日米軍専用施設面積の約70.4%が集中しているというこの現実。

翁長知事は平和宣言の中で「国民の皆様には、沖縄の基地の現状、そして日米安全保障体制の在り方について一人一人が自ら当事者であるとの認識を深め、議論し、真摯(しんし)に考えて頂きたいと切に願っています」と述べました。6月12日にお亡くなりになった元沖縄県知事の大田昌秀さん(92)もまた、2016年にこのように語っておられます。「沖縄の問題についてもう少し本土の人たちが自分たちの問題として考えてくれればいいが、そうでないところに一番の悩みがある。今後どうなるか心配でならない」。

お二方が言及された沖縄の現状(とりわけ婦女暴行問題、オスプレイの墜落事故、環境破壊、騒音など)については、日本じゅうが「当事者意識」をもって共有し考えるべき問題です。以下、翁長知事「平和宣言」の全文です(出典は6/23YOMIURI ONLINE)。

* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *

72年前、ここ沖縄では、住民を巻き込んだ激しい地上戦が繰り広げられました。昼夜を問わない凄(すさ)まじい空襲や艦砲射撃により、自然豊かな島の風景、貴重な文化遺産、そして何より尊い20数万人余りの命が失われました。
戦争の不条理と残酷さを体験した沖縄県民は、何をおいても命こそが大切であるという「命(ぬち)どぅ宝」の思いを胸に、戦争のない、平和な世の中を希求する「沖縄のこころ」を強く持ち続けています。
 戦後、沖縄は27年に及ぶ米軍統治を経て、念願の本土復帰を果たしました。沖縄県民、そして多くの関係者の尽力により、現在、沖縄は国内外からの多くの観光客でにぎわうなど、大きな発展を遂げつつあります。
 その一方で、戦後72年を経た今日においても、この沖縄には依然として広大な米軍基地が存在し、国土面積の約0・6%にすぎない島に、米軍専用施設面積の約70・4%が集中しています。
 復帰すれば基地負担も本土並みになるという45年前の期待とは裏腹に、いまだに私たちは、米軍基地から派生する事件・事故、騒音・環境問題などに苦しみ、悩まされ続けています。
 沖縄県は、日米安全保障体制の必要性、重要性については理解をする立場であります。その上で、「日本の安全保障の問題は日本国民全体で負担をしてもらいたい」と訴え、日米地位協定の抜本的な見直しや米軍基地の整理縮小などによる、沖縄の過重な基地負担の軽減を強く求め続けています。
 しかし、昨年起こった痛ましい事件の発生、オスプレイの墜落をはじめとする航空機関連事故の度重なる発生、嘉手納飛行場における米軍のパラシュート降下訓練や相次ぐ外来機の飛来、移転合意されたはずの旧海軍駐機場の継続使用の問題などを目の当たりにすると、基地負担の軽減とは逆行していると言わざるをえません。
 特に、普天間飛行場の辺野古移設について、沖縄の民意を顧みず工事を強行している現状は容認できるものではありません。
 私は辺野古に新たな基地を造らせないため、今後も県民と一体となって不退転の決意で取り組むとともに、引き続き、海兵隊の削減を含む米軍基地の整理縮小など、沖縄の過重な基地負担の軽減を求めてまいります。
 国民の皆様には、沖縄の基地の現状、そして日米安全保障体制の在り方について一人一人が自ら当事者であるとの認識を深め、議論し、真摯(しんし)に考えて頂きたいと切に願っています。
 一方、世界では、依然として地域紛争や、人権侵害、難民、飢餓、貧困、テロなどが人々の生活を脅かしており、また、国際情勢はめまぐるしく変化し、予断を許さない状況にあります。
 今こそ世界中の人々が民族や宗教の違いを乗り越え、協力して取り組んでいくことが求められています。
 今年は、日本国憲法が施行されて70周年、沖縄県に憲法が適用されて45周年になりますが、この節目に、憲法の平和主義の理念を再確認し、私たち一人一人が世界の恒久平和を強く願い求め、その実現に向け努力を続けなければなりません。
 先日お亡くなりになった大田昌秀元沖縄県知事は、沖縄が平和の創造と共生の「いしずえ」となり、再び戦争の惨禍を繰り返さないことの誓いとして、敵味方の区別なく沖縄戦で命を落とされたすべての方々を追悼する「平和の礎(いしじ)」を建立されました。
 私たちは、沖縄に暮らす者として、この「平和の礎」に込められた平和の尊さを大切にする想(おも)いを次世代へ継承するとともに、未来を担う子や孫のため、安全・安心に暮らせるやさしい社会、いつまでも子ども達(たち)の笑顔が絶えない豊かな沖縄の実現に向けて、絶え間ない努力を続けてまいります。
 慰霊の日に当たり、戦争の犠牲になった多くの御霊(みたま)に心から哀悼の誠を捧(ささ)げるとともに、平和を希求する沖縄のこころを世界へ発信し、恒久平和の実現に向け取り組んでいくことをここに宣言します。
 平成29年6月23日 沖縄県知事 翁長雄志

※引用参考データ:6/23YOMIURI ONLINE 沖縄「慰霊の日」、翁長知事の平和宣言全文、
6/13毎日新聞 大田昌秀さん死去 沖縄戦が原点「軍隊は民間人守らない」
posted by Lily at 16:29 | 政治と憲法
2017年06月18日

120.6月15日は安保闘争で樺(かんば)美智子さんが亡くなった日

3日前の6月15日(2017年の6月15日)。「改正組織犯罪処罰法」(「いわゆる共謀罪」)が、すったもんだの末に成立しました。7時46分のことでした。この時、国会周辺には、懸念や反対を訴える多くの人たちが。

6月15日で思い起こすのは、60年安保闘争で東大の大学生の樺(かんば)美智子さんが亡くなった日が6月15日だったということ。樺さんは国会議事堂正門前でデモに参加していたのでしたよね。その時の模様が1960年6月16日の朝日新聞の号外で詳しく報じられています。以下は、その時に樺さんの傍らにいた明治大学の学生の話です。見出しは「倒れた上にドロぐつ 樺さん あっという間に死ぬ」。ご覧ください下矢印1

「夜7時すぎ、南門から入った私たちは構内でスクラムを組みなおした。おびただしい数の警官が国会のビルの影に並んでいた。私たちはその群れに向かって前進した。警官たちも、こちらへ歩き出した。歌もシュプレヒコールも起こらない。恐怖の一瞬だった。二つの群れが正面からぶつかった。やがて警官たちは警棒を振るい始めた。隣の女子学生(樺さんのこと)は、髪を乱しながら頭を下げた。男の学生たちも首を縮めた。足もとはドロの海。隣の女子学生がつまづいた。ほかの学生たちも何人かころんだ。倒れた女子学生の上を学生のドログツが踏みにじり、そのあと巻き返しに出た警官たちがまた乗り越えた。そのとき「女が死んでいる」とだれかが叫んだが、手のほどこしようがなかった」。(引用おわり)

その樺美智子さんのお墓にはこういう詩が刻まれています下矢印1

「最後に」
誰かが私を笑っている
向うでも こっちでも
私をあざ笑っている
でもかまわないさ
私は自分の道を行く
笑っている連中もやはり
各々の道を行くだろう
よく云うじゃないか
「最後に笑うものが
最もよく笑うものだ」と
でも私は
いつまでも笑わないだろう
いつまでも笑えないだろう
それでいいのだ
ただ許されるものなら
最後に
人知れずほほえみたいものだ
1956年 美智子作

『コンサイス日本人名事典』によると、樺美智子さんの死について、警察側は転倒が原因の圧死と主張し、学生側は機動隊の暴行による死亡と主張したとのこと。学生側の死亡者を出したことで、警察はマスコミから批判され、6月18日には60年安保最大の33万人が国会を取り囲んだそうです。
posted by Lily at 17:59 | 政治と憲法
2017年06月11日

119.「共謀罪法案」に対する「国際ペン」会長声明

「組織的犯罪処罰法改正案」(「共謀罪法案」とか「テロ等準備罪」とか異名がありますがこれらは正式名称ではありません)については、海外からも疑問視されています。前々回(117)に、国連の特別報告者ジョセフ・カナタチ氏が安倍首相宛に懸念の意を示す書簡を送った話をしましたが、世界の作家や詩人などで作る「国際ペン」の会長もまた、「表現の自由を脅かす」との反対声明を出しました。以下、NHKニュースより下矢印1️。NHKは「テロ等準備罪」という呼称を使っています。

「テロ等準備罪」を新設する法案は、「組織的犯罪集団」が重大な犯罪を計画して準備行為をした場合などに処罰するもので、計画に対する当局の監視によって表現活動が萎縮するのではないかという指摘が出ています。この法案について、日本ペンクラブが都内で会見を開き、世界の作家や詩人などが参加する団体「国際ペン」のジェニファー・クレメント会長の声明を発表しました(6/5NHKニュース)。

次に「国際ペン」について「日本ペンクラブ」より転載します下矢印1️。

「国際ペンは1921年に設立され、95年以上の歴史を持つ、26000名以上の作家・ジャーナリストなどの表現者が参加する国際組織である。ロンドンに本部を置き、100以上の国家・地域に149のセンターがあり、日本ペンクラブもセンターの一つである。ジェニファー・クレメント国際ペン会長はメキシコ出身の作家・ジャーナリスト、メキシコペン会長を経て、国際ペン初の女性会長として、2015年カナダ・ケベック大会代表者会議(総会)で選出され、第23代国際ペン会長に就任した」。

そのジェニファー・クレメント会長の声明がこちらです下矢印1️。

国際ペン会長声明
「共謀罪は日本の表現の自由とプライバシーの権利を侵害する」
国際ペンは、いわゆる「共謀罪」という法律を制定しようという日本政府の意図を厳しい目で注視している。 同法が成立すれば、日本における表現の自由とプライバシーの権利を脅かすものとなるであろう。私たちは、日本国民の基本的な自由を深く侵害することとなる立法に反対するよう、国会に対し強く求める。
2017年6月5日
国際ペン会長 ジェニファー・クレメント

(原文)
Statement "The "Conspiracy Law will harm freedom of expression and the right to privacy in Japan"
It is with alarm that we observe the Japanese government's intent to establish a law named the "Conspiracy Law", which if adopted will harm freedom of expression and the right to privacy in Japan. We strongly urge the parliament to vote against this legislation, which could deeply harm the basic freedoms of the Japanese people.
June 5th, 2017
Jennifer Clement, President PEN International

※引用参考データ:6/5NHKニュース、日本ペンクラブのサイト


posted by Lily at 21:02 | 政治と憲法
2017年06月04日

118.「表現の自由」に国連特別報告者が懸念

昨年2016年の4月。日本の「表現の自由」について調査するため、国連のデイビット・ケイ氏が来日しました。ケイ氏は「意見及び表現の自由」の調査を担当する国連特別報告者です。国連は、その際の報告書を2017年5月30日公表しました。この報告書では、日本政府に対し、メディアの独立性保護と国民の知る権利促進のための対策を緊急に講じるよう要請しています。(例えば「特定秘密保護法」についてはジャーナリストに萎縮効果を与えることのないよう改正を促し、また、メディア規制については政治的公平性を規定する放送法第4条の撤廃を勧告、など)。ケイ氏は、来たる6月12日の国連人権理事会でこの報告書を提出する予定です。以下に、この報告書からピックアップします。

・日本は、報道の自由を明確に保護した憲法に、当然の誇りを持っている。にもかかわらず、報道の独立性は重大な脅威に直面している。

・脆弱な法的保護、新たに採択された『特定秘密保護法』、そして政府による『中立性』と『公平性』への絶え間ない圧力が、高いレベルの自己検閲を生み出しているように見える。こうした圧力は意図した効果をもたらす。それはメディア自体が、記者クラブ制度の排他性に依存し、独立の基本原則を擁護するはずの幅広い職業的な組合組織を欠いているからである。

・多くのジャーナリストが、自身の生活を守るために匿名を条件に私との面会に応じてくれたが、国民的関心事の扱いの微妙な部分を避けなければならない圧力の存在を浮かび上がらせた。彼らの多くが、有力政治家からの間接的な圧力によって、仕事から外され、沈黙を強いられたと訴えている。これほどの強固な民主主義の基盤のある国では、そのような介入には抵抗して介入を防ぐべきである。

・1950年に制定され政府に放送メディアを規制する直接的な権限を与えた『放送法』は、4条において、ジャーナリストの職業的義務と、放送免許の取り消しを行う政府権限を混同している。政府は放送法4条を廃止し、メディア規制から手を引くべきである。

・「特定秘密保護法」は、実施の初期段階ながら、重大な社会的関心事のメディア報道を委縮させる効果を生んでいる。例えば、内部告発者を保護する体制が弱いことは、情報源の枯渇につながり、ジャーナリスト自身も情報入手によって処罰されることを恐れるようになるだろう。こうした恐れを持つことで、特に影響を受ける可能性があるのは、原子力産業の未来、災害対応、政府の国家安全保障政策など、日本の今日的な公共の関心事についての報道だ。

・政府による圧力はさらに、第二次世界大戦中の「従軍慰安婦」問題など、非常に重要性の高い問題の議論も妨げている。従軍慰安婦への言及は、中学校で必修科目である日本史の教科書から削除されつつある。第二次世界大戦中に犯した罪の現実を教科書でどう扱うかについて政府が介入することは、国民の知る権利を脅かし、国民が日本の過去の問題に取り組み理解する力を低下させる。

・ヘイトスピーチに関して日本は、広範囲に適用できる差別禁止法を採択しなければならない。まず、差別行為を禁止する法律を制定し、そうした法律が整えば、憎しみに満ちた表現に対する政府の広範な対応が、憎悪に反対する教育的かつ公の声明などの形で、差別との闘いに真の影響をもたらすようになるだろう。

※引用参考データ:
2017/5/31時事ドットコムニュース、
2016/4/19国際連合広報センター
「日本:国連の人権専門家、報道の独立性に対する重大な脅威を警告」

posted by Lily at 00:00 | 政治と憲法